この度エムピウでは、製品として使用されなかった革に型押し加工を施した商品の販売を開始します。
素材ロス率の減少と生産量の拡大を目指す試みで、reproductionやregenerationなど〈再生〉を指す意味合いから《Rシリーズ》と名付けました。
天然素材における問題点
天然皮革は各部位によって異なるシボ(皮膚の凹凸)が認められます。また自然に近い仕上げのものほど生物由来の傷跡や血筋が目立ち、ロットによっては染色の際に出来た色落ちや色斑がみられることもあります。大げさなコーティングも施されていないため、小傷がつきやすい状態のまま製作されます。
エムピウがこのような素材を好んで使う理由は、第一にそれら全てが天然由来の「らしさ」であると考えていること。そして使い手となる皆様に「共に育つ」時間としてのエイジング変化を楽しんでいただきたいとの想いにあります。
もちろん「正規品として使える程度の状態」を定めており、基準以下となった部分は除外されます。そのため製品化不可と判断される範囲が広いロットが続くと、長期に渡って予定していた数量を大幅に下回ってしまうこともあります。
さらにそのような革は素材在庫として倉庫を圧迫することになります。小さな部品やサンプルに使用するなど活用策も講じていますが、あまりにも多くなると破棄せざるを得ない状況でした。
課題解消に向けた取り組み
そこで今回「せっかくの素材を無駄にせず」に「生産数を確保する」目的で、そのままでは使えない革たちを製品利用可能な状態へと『加工する』道を探りました。施行を重ねた結果(BabeleやPuebloのようなスクラッチ〔削り〕ではなく)オリジナルの型押しで凹凸を重ねて陰影がある表情を持たせる方法に行き着きます。
現時点で対象としている革は[Minerva Liscio / Minerva Box / Buttero / Buscheto]です。
- 新たな凹凸を加えることでムラや傷跡などを馴染ませるようにしています。
- もともと表情の違いが大きく、一点ごとの模様に個体差があります。
- プレスと加熱により「張りが強く硬めのテクスチャ」「ヴィンテージ感のあるやや焦げた色味」に変化しています。
- 使用時の小傷がつきにくいことから、多少なりとも手荒く扱える日常使い向けです。
- 正規品と同じ天然素材なのでエイジングも綺麗に進みます。

エムピウとしては未知の挑戦となりますため、どのように受け止めていただけるか予想がつかない点もございます。まずは皆様への素材提案というかたちで、新たな個性として捉えていただける方にお届けしたく進めてまいりました。
「Rシリーズ」
需要が急増しているmillefoglieから先んじて製作を行い《millefoglie R》として展開致します。

通常仕様で使用しなかった素材とはなりますが、全く同じ革のため原価は変わらず、加工分の費用もかかります。高額転売抑止の観点も加えて勘案し、同皮革使用商品と同価格の設定としました。もちろんエムピウ正規品の扱いとなりギャランティカードをお付けします。
当初はテストケースとして例外的に抽選を行わず「蔵前直営店のみ」で先着順数量限定にて先行発売します。
オンラインストアやお取引先店舗様での販売は現段階で未定となり、今後検討を重ね可否や手法を決定します。
販売開始前より蔵前直営店にてサンプル品を用意致します。事前来店可能なお客様に限られてしまいますが、お手に取って素材の質感などを確認していただけますと幸いです。
当シリーズのカラーバリエーションはロット次第で変化し、生産量も安定しません。通常カラーの隣でゆっくりと製作され、販売も不定期となる見込みです。生産量を補うためにも長期的な継続を目指しておりますので、ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。